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二、

 月日は流れ、新しいクラスでの生活もすでに二ヵ月経っていた。

 神谷の、茜に対する態度は相変わらずだった。新は常に茜をかばい続けていた。大げさに守る事はないが細やかに気を配っている新を見て、沙知達は自然に茜を守るようになっていた。

 特に沙知は積極的だった。神谷のやり方に対して頭に来ていた事もある。しかしもう一つの理由として、茜を守る新の姿を見るたびにちくりと感じる胸の痛みが嫌だった、というものがある。

 その痛みの理由は自分でも分かっていなかった。だが沙知はあえて考えてみようとしなかった。また、その痛みを人に気がつかれてしまうようなそぶりは決して見せなかった。

 もう一人、沙知には気になる生徒がいた。

 由紀という少女。いつも取り巻きの五人を引き連れている由紀は、典型的な「男子の前では態度が変わる女の子」だった。

 新の事が気になるらしい由紀は、何かときっかけを作っては新にまとわりついていた。

 その度に、新の周りにいる沙知、香苗、茜に対して好意的とは言えない視線を投げ掛けていた。

 ある日の体育の時間の事だった。

 その日の授業は、体育館を半面に分け、男子がバレーボール、女子がバスケットボールだった。

 沙知は、抱え込んだバスケットボールに頬杖をつき、つまらなそうにため息をついた。

「あーあ、こっちもバレーだったらよかったのになぁ。私、バスケってどうも苦手なんだよね」

 立ったまま壁に寄りかかっていた香苗が、沙知に目を向けた。

「いいじゃない、どっちにしろあんたは背がそんなにあるんだから。バスケだって上手に出来るでしょ」

 香苗の言葉に、沙知がするどい目を向けた。

「ほら、そういう偏見!それがあるから私は嫌なの。背が高いってだけで、いつも私がジャンプトスやらされるしさ」

 沙知の隣に座っていた茜が、少し笑ってみせた。

「じゃあ、今日のジャンプトスは全部私か香苗がやろうか?」

 茜の笑顔を受け止めた沙知は、ふうっとため息をつきながら目を伏せた。

「いや、それだと負けが確実だから、私でいいんだけどね」

 ふと、目を伏せた沙知の前に人影が立ち止まった。

「ジャンプトスくらいでぐだぐだ言ってんじゃないよ。背が高いくらいしか取り得がないくせに」

 ぴくりと肩を震わせた沙知は、眉を寄せた顔をゆっくりと上げた。

「……背が高い事しか取り得がない、ねぇ。あんたって人はそこまで言いますか」

 沙知は、取り巻きと共に立って敵意をむき出しにしている由紀に目を向けた。

「前から訊きたかったんだけど、あんたは何でそんなに私達につっかかるわけ?」

 由紀が答える前に、香苗がぽつりと口を挟んだ。

「そんなの分かりきってるでしょ。ジェラシーよ、ジェラシー」

「はん!冗談じゃない。どうして私があんた達ごときにそんなものを感じなきゃいけないの?」

 鼻で笑った由紀は、それでも頬をぴくぴくさせながら香苗に目を向けた。

「私はねぇ、正直なだけなの。この沙知って子に、背が高い以外の特長があるんだったら教えてほしいんだけど」

「そんなの、たくさんあるじゃない。例えば……」

 答えようとした香苗が声をつまらせた。

「例えば……」

 その横で、沙知は小さく呟いた。

「ないんかい」

「……えっと、ごめん。急な話で、今ちょっと思い出せない」

 二人を見比べていた由紀が、勝ち誇ったように笑い声を上げた。

「ほーら、ないんじゃない。そんなんじゃこの先、生きてくのが大変ね。せめてもの救いで背を高く生んでくれた両親に感謝しなさいよ」

 あまりの発言に、頭に来るより呆れが入ったらしい沙知は、香苗に冷めた目を向けた。

「どう思う、この言い草。私さぁ、この人のこういう部分って、人としてどうかと思うんだけど」

 沙知の視線の先で、香苗が悔しそうな顔をした。

「なんか、ここまで勝ち誇られると人事ながら頭に来るなぁ。ちょっと、茜。なんか思いつかない?沙知のいいところ」

 話を振られた茜が、頭をかいた。

「沙知のいいところ、ね……」

 その時ふと、茜の目の前にバレーボールが転がってきた。顔を上げ、ボールを取りに来た人物を見つけた茜が、由紀に声を掛けた。

「ねえ、その質問、あの人にしてみたら?」

「あの人?」

 眉をひそめながら茜の視線を追った由紀が、そこに新の姿を見つけた。慌てて顔を背ける由紀を見て、香苗が小声で呟いた。

「あらら、一生懸命顔作り直してる。女心よねぇ」

 茜からボールを受け取った新が、一〇人近いその固まりに目を向けた。

「おまえら、何してんだよ。なんか、あっちから見ても険悪な雰囲気が漂ってんだけど」

 由紀が、一オクターブ高くした声で答えた。

「えー、そんな事ないよ。私達、仲良くお話してただけ。ねぇ、沙知?」

 同意を求められた沙知は、目を逸らしながら再びボールに頬杖をついた。

「……そうそう、仲良くお話してただけよねぇ」

 二人の様子を探るように見ていた新が、茜に目を移した。

「へー。話してるだけ、ねぇ。で、議題はなんなんだよ」

 新の視線を受けた茜が、にっこりと微笑んだ。

「今の議題は『沙知のいいとこ探し』かな。ねえ、新から見た沙知のいいところってどこかな?」

「ん、沙知のいいとこ、か?」

 持っていたボールを頭上に持ち上げながら、新がさらりと答えた。

「というか、こいつっていいとこだらけだと思うけど」

「どこが!」

 吐き捨てるように言った由紀が、新の視線を感じたように笑顔を作り直した。

「……具体的に言うと、沙知の特長ってどの辺にあるのかなぁ」

「うーん、具体的、ねぇ」

 新が考えるように天井を見上げた。

「一番分かりやすいのは、背が高い事だな」

 香苗が大きく頷いた。

「確かに、それは分かるのよね、それは」

「でもまあ、沙知の一番いいところは」

 真面目な顔で、新が言葉を続けた。

「思いやりのあるところ、だな」

 由紀が、軽く眉を寄せて呟いた。

「思いやり?……私、この子のそういうところ、まだ見た事ないんだけどなぁ」

「ああ、こいつってすぐに照れるタイプだから、あんまり人前でそういう部分、見せないんだよな」

 答えながらしゃがみ込んだ新が、沙知の頭に手を置いた。

「だけど頭の中では色々考えてるし、見てないようでもちゃんと人の事見て気を使ったりしてるんだよ。俺、こいつのそういうところ、すげぇいいなぁっていつも思ってる」

 話題の中心である沙知が、真っ赤な顔をボールで隠しながら呟いた。

「あの……。誉めてくれるのはすごく嬉しいんだけど、もうそろそろ勘弁して下さい」

「あ、そう?」

 けろっとした顔で新が立ち上がった。

「じゃ、俺は戻るからな。おまえら、あんまり沙知の事いじめるなよ」

 何事もなかったかのようにすたすたと歩いて行く新の背中を、由紀が無言で見送った。その表情のない由紀の顔を見上げながら、香苗がこっそりと茜にささやき掛けた。

「ちょっと、茜。いくらなんでも刺激が強過ぎたんじゃないの?」

 茜が、複雑な表情を浮かべながらぽつりと頷いた。

「うん……。私、新があんなにも直球勝負なタイプだとは思ってなかったから」

 立ち尽くしていた由紀が微動だともせずに呟いた。

「……沙知。この借りは、次の試合で返すから」

 呼びかけられた沙知は、恐る恐る由紀の顔を見上げた。

「あの、悪いんだけど。出来ればそういうの、ご遠慮したいんですが」

「やだぁ、遠慮なんてしないでよ。こう見えても私、結構義理堅い人間なんだから」

 ぎ、ぎ、と音がしそうなくらい不自然に、由紀が沙知に顔を向けた。

「……覚悟してなよね」

 歩き去る由紀の怒りがにじんだ背中を見ながら、沙知は深いため息をついた。

「こういうのを逆恨みって言うんだよね」

沙知の呟きを聞いて、香苗がわざとらしく明るい声を出した。

「あ、でもほら、大丈夫よ。今は新が隣のコートにいるわけだし、由紀もそんなに無茶したりしないって」

 気まずい雰囲気の三人に向かい、体育教師が声を掛けた。

「そこの三人。あなた達の番よ。早く整列しなさい」

 顔を上げた沙知は、相手側コートに目を向けた。手首をぶらぶらさせ、足首を回している由紀を見て、膝に顔を埋めてうんざりとした声を出した。

「なんか、ものすごく張り切ってるしぃ」

 由紀の姿を見た香苗が、しゃがみ込んで沙知の肩に手を置いた。

「とにかく、試合が始まったらなるべくボールから離れたところにいなさい。くれぐれも乱闘に持ち込まれないようにね」

「……分かった。ジャンプトスの後はずっと隅っこの方にいるよ」

 諦め顔で、沙知は立ち上がった。

 整列、礼をすませた後、沙知と由紀を残して全員がコートに散った。

 至近距離に迫った由紀が、目だけは笑ってないとびっきりの笑顔で沙知を見上げた。

「逃げようったってそうはいかないからね。正々堂々と、私のお礼を受け止めてよ」

 やなこった、と思いながら、沙知は黙って目を逸らした。

 ピーっとホイッスルが鳴り、沙知は形だけジャンプして見せた。その時、目の前にある由紀の目にふと不吉な影を見たような気がした。

 いきなり頬に強い衝撃を感じ、沙知は背中からその場に崩れ落ちた。

 目の前に、ちかちかとした光が飛び交っていた。その中にいる由紀が痛そうな顔をしながら手首を振っているのを見て、沙知は初めて自分が殴られたという事に気がついた。

「そう来たか……」

 一言だけ呟いた沙知は、目の前が次第に真っ暗になるのを感じた。



 保健室で目を覚ました沙知は、ベッドの脇に立っている茜の背中に気がついた。

「……ん」

 沙知の声に振り返った茜が、心配そうに覗き込んだ。

「大丈夫?」

「うん、……なんとか」

 沙知のかすれた声を聞きつけ、保険医が顔を出した。

「気がついたみたいね。どう、頭痛む?」

 尋ねられた沙知は、冷却剤の上にある自分の頭に恐る恐る手をやった。

「えっと……。頭が痛いってより、この大きなたんこぶが痛いです」

 保険医が、少し笑って見せた。

「まあ、それは仕方ないわね。もう少しそのまま冷やしてなさい」

 場所をゆずるためにベッドの足元に移動していた茜が、保険医に声を掛けた。

「先生、私もうしばらくここにいてもいいですか?」

「ええ、いいわよ。私は体育の先生と近藤先生に報告してくるから、この子の事見ていてあげて」

「はい」

 頷いた茜と沙知に笑顔を見せてから、保険医が出て行った。それを見送った茜が、ベッドの脇にある椅子を引き寄せた。

「……沙知、ごめんね。私のせいで由紀の事怒らせちゃって」

「やだなぁ、茜のせいじゃないって」

 沙知は、弱々しいながらも笑顔を浮かべた。

「それより、茜がここまで私の事連れて来てくれたの?」

 茜が小さく首を振った。

「ううん、新だよ。私は、たまたま保健係だったから残らせてもらえただけ」

「……そっか」

 呟いて天井を見上げた沙知の顔を、茜がじっと見つめた。

「沙知が倒れた時、新がものすごい勢いで走ってきたの。体育館に戻る時も『あいつは頑丈だから大丈夫だろ』なんて言いながら、誰よりも心配してるのが伝わってきた」

 沙知から目を逸らして、茜が呟いた。

「ねえ、沙知はどうしてそんなに新に大事にしてもらえるの?」

 天井に目を向けたままで、沙知は少し笑った。

「何言ってるの。茜の方がよっぽど大事にしてもらってるじゃない」

「……それって、神谷との事?」

 茜の声が微妙に変わったのに気がついて、沙知は顔を向けた。その茜の表情は、沙知が知っているものよりも少し大人びて見えた。

「新が神谷から守ってくれてるのはそんな理由じゃないの。もっと、……義務に近いものだと思う」

「……義務?それって」

「由紀、ね」

 沙知の言葉を大きな声で遮って、茜が笑顔を見せた。

「気を失った沙知を見て、さすがに反省した顔してた。でもまあ、あの子気性と行動が激しそうだからこのまま大人しくしてるとは思えないけど。気をつけた方がいいかもね」

「……うん、そうだね」

 小さく頷いて、沙知は再び天井に目を向けた。

 茜の言葉がとても気になったが、何故だか訊いてはいけないような気がした。



 放課後。

 腫れていた頭が楽になった沙知は、保険医の許可を得て、部活に出ていた。

 サーブ練習をしていた沙知の手元が狂い、開かれていた窓からボールが飛び出して行った。ボール拾いの一年生が慌てて出て行こうとするのを笑顔で引き止め、沙知は自分で体育館を出た。

 いつもながら、体育館の裏には人気がなかった。

 あっさり見つけたボールを手にした沙知は、ふと話し声が耳に入って振り返った。どうやら、一つ角を曲がった辺りから響いて来ているらしい。軽い気持ちで、沙知は声のする方に歩み寄った。

 沙知のいる学校には、小学校が隣接して建てられていた。背の低いフェンスで遮られている小学校の敷地内に、小さなうさぎ小屋が見えた。   

 その小屋の前に、三年生くらいの男の子、そして何故か神谷がいた。キャベツの破片を手にしながらしゃがみ込んでいる神谷を、沙知はしばらく不思議な気持ちで見つめていた。

 ふいに、神谷が男の子の手からキャベツを取り上げた。

「だからなぁ、言ってるだろ。芯の部分はもっと小さくして食わせろって」 

 男の子が、ぷっとふくれた顔で反論した。

「えー、大丈夫だよ。うさぎは歯が丈夫なんだから」

「そりゃそうだけど、こいつはまだ子供なんだよ。おまえだって、でっかいパンとか食う時、小さくするだろ?」

「うーんと、……する」

「だろう。だったらこいつにやる時も、もっと小さくしてやれ」

 男の子が納得したように大きく頷いた。

「分かった。お兄ちゃん、結構優しいね」

「馬鹿、気がつくのが遅いんだよ」

 頭を小突かれて笑っていた男の子の目が、ふと沙知に止まった。小さく首を傾げて見せながら、男の子が神谷の肩をぽんぽんと叩いた。

「お兄ちゃん、あっちで女の人が見てるよ」

 男の子の言葉を聞いて、神谷の背中が一瞬固まった。少しして、驚いた顔をした神谷が勢いよく振り返った。

 沙知は、神谷が浮かべた驚きと気恥ずかしさが混ざったような表情を見て、戸惑いを感じた。

 視線を合わせたまま動かない二人を見比べながら、男の子がにやにやと神谷の顔を覗き込んだ。

「彼女?」

「……余計な事言うな」

 目を逸らして呟いた神谷に、男の子がうりうりと肘で攻撃しながら言葉を続けた。

「なかなか可愛いじゃん。やるねぇ、お兄ちゃん」

 にやにや笑いを止めない男の子を、神谷が後ろ足で軽く蹴って見せた。男の子がくすくすと笑いながら足元のキャベツを拾い始めた。

「はいはい、お邪魔しました。じゃあね、お兄ちゃん」

 言葉を切った男の子が、沙知に顔を向けた。

「お姉さん、この人ってこんなに恐い顔してるけど結構いい人みたいだよ。仲良くしてあげてね」

 呼びかけられて困った顔をしている沙知を置いて、男の子は校舎の中に消えて行った。

 憮然とした顔で頭をかいていた神谷が、覚悟を決めたようにフェンスを乗り越え、沙知に顔を向けた。

「あんた、何してんだ、こんなところで」

 持っていたボールを神谷に示して見せながら、沙知はぼそっと呟いた。

「ていうか、それって私のセリフ」

「俺は……、うさぎにエサやってた」

「それは分かってるけど」

 上目使いに見つめる沙知の目から逃れるように、神谷が顔を背けた。

「ここを通りがかった時、あいつがエサやってたんだ。ちょっと見てたらずいぶんと適当なやり方してたから注意しに行った。それだけだ」

「ふーん……」

 一応納得した沙知は、驚いていた神谷の表情をふと思い出し、慌てて顔を伏せた。その沙知に目を走らせた神谷が、ふてくされたように呟いた。

「……笑ってるだろ」

「……ううん、笑ってないよ」

 なんとか笑いを押し殺して、沙知は顔を上げた。

「ねえ、あの子は神谷の弟?」

「違う、知らない奴だよ」

「そうなんだ。それにしてはずいぶん仲良かったじゃない。もしかして、結構子供好きだったりするの?」

「……どうでもいいだろ、そんな事」

 沙知はにやにやしながら神谷の顔を覗き込んだ。

「そんなに照れる事ないじゃない。私、今ので神谷の事ちょっと見直したよ」

「ガキと話してるとこ見ただけで見直すなんて、あんた俺の事よっぽど極悪人だと思ってたんだな」

「極悪人とまでは言わないけど、悪人だとは思ってた」

 冗談とも本気ともつかない顔で答えた沙知をしばらく見つめた後、神谷が真面目な顔を作って見せた。

「誰にも言うなよ」

「言うなよ、じゃなくて、言わないでね、でしょ」

「……なんだと」

 眉を寄せて睨みつける神谷を見て、沙知はけらけらと笑った。

「そーんな恐い顔しても駄目だってば。さっきあんなとこ見ちゃったんだもん。かえって笑っちゃうじゃない」

「……このやろ」

 声をつまらせて言い返せない神谷に、沙知がにこにこと笑顔を向けた。

「さあ神谷君、言ってごらん。『誰にも言わないでね』」

 悔しそうに俯いていた神谷が、やがてしぼり出すような声で呟いた。

「誰にも、言わないで、……ね」

「はい、よく出来ました。じゃあ、言わないでおいてあげます」

「……よろしくお願いします。じゃあ、俺は帰るから」

「あ、ちょっと待って」

 とっとと背中を見せた神谷の制服の裾を、沙知はつかんで引き止めた。

「交換条件ってわけじゃないけど、一つお願いがあるの」

 沙知の行動に、神谷が戸惑ったように振り返った。

「……なんだよ、おい。金出せとか言い出すんじゃないだろうな」

「そんなんじゃないよ。もっと簡単な事」

 言葉を切って、沙知は真剣な表情を浮かべた。

「茜をいじめるの、もうやめて」

 その言葉を聞いて、神谷の表情が固まった。

 その変わりように、沙知は驚いて口をつぐんだ。

 以前のように何も現さない冷たい表情に戻った神谷が、沙知の手をそっと振り払った。

 そのまま黙って歩いて行く神谷を見送りながら、沙知はやはり何も言えなかった。


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